スーパーカーSLS AMGに4ドアクーペ計画が存在
メルセデスAMGのスポーツカーに、4ドアの噂は以前からありました。やはりビジネス的に見れば、会社の経費で落としやすい4ドアモデルは経営の安定のためにも必要ではあるのです。
ポルシェAGが911などの2ドアスポーツカー1本でずっと経営をしてきた結果、アメリカが不況になるとポルシェの経営が傾くというリスクを露呈していました。そのために4ドアのカイエンを開発し、928のリベンジと言われるパナメーラをラインナップに加えています。
SLS AMGが発売(2009年~)された後、2012年の時点でSLSに4ドアの計画があり、その特許が出願されています。これを見る限り、後部ドアの大きさや後方への開き方など、マツダRX-8を参考にしていることは明白です。
またポルシェの初代パナメーラが2009年の登場ですから、このパナメーラのヒットを見てダイムラーAGも同じカテゴリーのモデルの計画を開始したことは容易に推測ができます。
遅から早かれ、来るなと思われていたモデルが2017年のジュネーブショーに登場しています。
AMG-GT 4ドアクーペはその名の通り4枚のドアがあり、リアシートがあり大人4人が乗れる車内空間と荷室を持ちます。ファミリーカーとして十分に使えるパッケージングでありながら、AMGの血統を引き継ぐスーパーカークラスのぶっ飛んだ「走行性能」と「官能性」を併せ持っています。
最強の4枚ドアのセダンと言えます。
AMGの4ドアクーペ「メルセデスAMG GTコンセプト」
この明らかにポルシェ・パナメーラを意識したズングリムックリのスタイリッシュ4ドアは、今後の自動運転化する車のデザインのスタンダードになることが予想されます。
メルセデス・ベンツがコンセプトで提唱する「F015 Luxury in Motion」や「Vision Tokyo」のような、自動運転化が進みますと鋭角なスポーツカールックではなく、移動するリビング空間というのが今後の自動車デザインの方向性として示されています。メルセデス・ベンツCLSなどは、その次世代への過渡期にあるデザインとして、実験的にユーザーの反応を見ているものと考えられます。
そこで案の定、このコンセプトモデルの市販Verがスクープされているわけです。
テスト車両は偽装によって細部の形状は判りにくいですが、主に後半部分のCピラーからトランクにかけての形状はGTコンセプトからは変わっているのが判ります。
さすがにエキゾーストテールパイプは、コンセプトモデルのようなセンター出しではなくなっており、リアウィンドウもパナメーラのようなズングリむっくりとした姿からは変わっているようです。
初代ポルシェ・パナメーラのお尻は、ポルシェ特有のデザインなのですが好き嫌いが大きく分かれており、「911の水死体」とまで言われる始末で評判がすこぶる悪いのでした。
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パワートレインは4.0L/V8ツインターボと電気モーターの組み合わせで、最高馬力は合算で805psを発揮しパナメーラターボを凌駕するとも言われています。
こういった表記の仕方でいつも思うのですが、ハイブリッドでガソリンエンジンと電気モーターのパワーを合算するのって、意味があるのでしょうか?両方のパワーを同時に最高値で利用することって、まずあり得ないと思うのですが、カタログの数字的には数値が大きいほど「スゲェっ!?」となるわけではありますが。
2ドアクーペが生まれてヒットしたワケ
SUVが全盛の今の時代で、軒並みEUメーカーでは4ドアセダンと並んで「4ドアクーペ」と呼ばれるスタイリッシュ4ドアのモデルをラインナップしています。
「クーペ」と言えば、これまでは「2ドアクーペ」のことを指していました。ピラーを寝かせて低い屋根、美しい流麗なスタイルを持つ2ドア車ですが、2人乗車なら問題は無いものの家族3人や4人で使うには何かとその使い勝手は悪く、徐々にそのモデル数は減少してきています。
元々、2ドアクーペはアメリカ市場へ向けて「セクレタリーカー」として開発されています。「セクレタリー」=「秘書」という意味で、1960年代のアメリカで男女の雇用機会均等に関する法律が相次いで整備された結果、女性の社会進出が加速しました。
日本では、同じような動きが1985年の「男女雇用機会均等法」の制定によって、男女平等がムーブメントとなります。
アメリカは車通勤の社会です、社会進出した女性たちが通勤用に購入したのが、2ドアクーペでした。旦那さんや親が、家族で乗るためのセダンやピックアップトラックを持っていますので、女性たちは自分1人ないしは2人で乗って移動ができればよかったのでした。
ここで開発されて、アメリカ市場へ向けて輸出されたのが、フェアレディZでありシルビアやスープラです。ドイツメーカーも各クラスのクーペや、富裕層向けのSLや8シリーズといったラインナップを持っていました。
日本でかつてあった4ドアクーペのブーム
自動車はとにかく、販売台数が多くないと安くはなりません。日本車の2ドアクーペは、アメリカの販売台数に支えられてブームとなることができました。
ここで日本では、1980年代後半にバブル景気が到来します。自動車の販売台数が、アメリカの1,200万台に次ぐ世界2位の800万台となり、自動車が売れに売れます。
基本のセダンが売れれば、メーカーは潤沢な開発予算が生まれ、開発にも遊び心が出てきます。ここで誕生したのが、サッシュレスで4枚のドアをもち、ピラーレスのハードトップで強く傾斜したAピラーとCピラーによって全高が低く、クーペのようにスタイリッシュな4ドアの車が誕生します。
スタイリングが優先された分、前席は圧迫感があり後席は狭かったのですが、2ドアクーペが使い勝手により家族に反対されていたお父さんたちが飛びつくことになります。トヨタからはカリーナED/コロナEXIV、カローラセレス/スプリンターマリノを筆頭にマークII 3兄弟、日産もローレルやプレセア、ホンダはインスパイア/セイバーやインテグラ、三菱自がギャランなどなど各社勢揃いしたのでした。
しかし、Bピラーが無いハードトップは側面衝突に弱く、正面衝突でもキャビンの空間が保持できないなどの致命的な欠点があり、世界的な衝突安全基準の強化への流れの中で、10年ほどで消えていくことになります。
欧州から4ドアクーペのブーム再び
再び流麗なスタイルを持つ「4ドアクーペ」が世に出てきたのは、2005年に登場したメルセデス・ベンツCLSとなります。「CLS」は、CL(Coupe Lxualy)のような流麗なスタイルとSクラスのようなステータスを併せ持つという意味になります。
この時に初めて、メルセデス・ベンツがスタイリッシュな4ドアモデルのことを「4ドアクーペ」と呼び、宣伝にワードを用いています。
ただしメルセデス・ベンツのCLSは、2003年に登場したマツダのRX-8が欧州市場で売れていたことから、コンセプトを参考にして開発されています。マツダRX-8は、2ドアロータリーモデル(RX-7)の開発を親会社のフォードより制限された中で、苦肉の策として観音開きの変則的な4ドアモデルとして開発されたものになります。
メルセデス・ベンツのスタイリッシュ4ドア「CLS」がヒットしますと、ドイツ勢がこぞって4ドアクーペを開発し、BMWのグランクーペやアウディ・スポーツバック、フォルクスワーゲンのアルテオンなどが追随することになります。
このように、現在の4ドアクーペブームの始祖には、日本車が大きく関わっています。
欧米車を真似する日本メーカーというイメージがありますが、意外とメルセデス・ベンツも日本車を研究して新型モデルを開発しています。SL/SLKのバリオルーフは、CR-Xデルソルのトランストップやソアラ・エアロキャビンを徹底的に分解・研究して開発されたとされていますし、MLクラス(現GLE)はRAV4の北米市場での大ヒットで開発が始まったとされていたり、レクサスLSが初めて登場した時もレクサスショックが走ったとされ徹底的に分解して研究、後のSクラスへフィードバックしていると言われています。
スタイリッシュ4ドアクーペ化の波はSUVへも波及
そのような、スタイリッシュで使い勝手も良いことから今も昔も人気がある「4ドアクーペ」ですが、その4ドアクーペ化は人気のSUVにまで及んでいます。
「SUV」とは、Sports Utility Vehicle の略で日本語では「スポーツ多目的車」と訳されます。「スポーツ」とはスポーツカーのスポーツではなく、文字通り運動するスポーツのことです。
つまりは、テニスや野球、サッカーなどのスポーツをするための道具を積んで、郊外の目的地まで出掛ける車という意味です。そこから派生して、キャンプやBBQなども含めてレジャーに出かける車、となっています。
郊外へ出掛けますから高速道路も快適に走れて、キャンプ場やBBQ場は山の中や河原などにあることも多く、不整地路面も問題無く走れるように地上高を上げたモデルとなっています。不整地路面を走るとは言っても、道は整備されていますからランクルやパジェロ、Gクラスのような本格的なオフロード走破性能は必要ありません。
このようにSUVでは人と荷物の積載性能が求められているはずなのですが、SUVにもスタイリッシュな「クーペSUV」と呼ばれるモデルが登場してきています。これは、ポルシェ・マカンのヒットによるところが大きく、メルセデス・ベンツのGLC/GLEクーペやBMW X2/4/6といったところは、屋根後端をなだらかに下げてスタイルを優先したSUVとなっています。
当然これは荷室の縮小となり、詰める荷物量や積載性が劣ってまでも、スタイルを求めるユーザー層が一定数存在することを示しています。荷室スペースが小さくなるとはいっても、セダンタイプのトランク容量から比べれば、SUVの荷室は大きく使い勝手は良いのでした。
このようなボディタイプの拡充は、技術の進歩によりボディ剛性が上がり、自由にデザインができるようになってきたことによる恩恵でもあります。