メルセデスベンツGLCクーペ220d

メルセデス・ベンツ

ポルシェ・マカンを追いかけるメルセデス・ベンツGLCクーペ

2017年3月25日

スタイリッシュ4ドアクーペの波がSUVへも

メルセデスベンツGLCクーペ220d

CLSでスタイリッシュ4ドアブームに火を付けたメルセデス・ベンツですが、今度はSUVにもクーペスタイルのスタイリッシュ4ドアを持ち込んできました。積載能力を競うSUVが、トランク容量を犠牲にしてまでスタイリッシュを求める意義とは!?実車を見ながら検証してみます。

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元来メルセデス・ベンツというブランドは、業界を牽引する革新的なモデルを出してくる反面、トヨタのような面も持っており他社がヒットさせた市場へ間髪を入れずにライバルモデルを投入してくるということも頻繁に行う自動車メーカーです。もっとも、そこが大企業の本質というところかもしれません。

このような姿勢は、よく真似っこ体質などと批判を受けますが、即座にライバルとなる新型モデルを投入できるだけの技術と基礎開発を常に行っているということにもなります。トヨタなどはオデッセイやエルグランドのように、そこから圧倒的な販売力で市場を完全に奪ってしまうわけですが。

メルセデス・ベンツでは過去にも、トヨタが北米でRAV4をヒットさせるとすぐにMLシリーズを投入、CLSもEUでマツダRX-8が売れていたことから研究して開発されています。SLやSLKのバリオルーフはトヨタ・ソアラエアロキャビンとホンダCR-Xデルソルのハードトップ開閉機構を徹底的に研究して商品化をしてきています。

北米でのMLシリーズのヒットをGLC/GLEが引き継いでいるわけですが、ここへ来て2014年に登場したポルシェ・マカンが大ヒットしており、ポルシェの経営を大きく支えるまでにその生産規模が成長しています。この「マカンはポルシェのスポーツカー」と豪語するスタイリッシュSUVのヒットに触発されたのか、驚くべきスピードの2年あまりでGLEに続きGLCのSUVクーペボディを開発して市場へ投入してきました。

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今週、たまたま本国オーダーの足回りの部品を発注しておりディーラーへと足を運びますと、そこには流麗なボディスタイルのGLCクーペが展示されていたのでした。

販売から時間が経過した古いメルセデス・ベンツでは、補修用部品の本国在庫も少なくなってきているようですが、生産終了のアナウンスは無いためある程度のオーダーが入ればまだ生産をするとのことです。このあたりが、15年超で在庫が無くなればキッパリと切り捨てられる日本車との整備における最も大きな違いでもあります。

ですから、EU車では長寿命の個体が多く生き残っているのです。

さて、本日は土曜日のためディーラーは大忙しで、サービスマンも手が足りていないようでした。担当の手が空くまでしばし、展示してあるGLCクーペを観察して待ちます。

GLCクーペは後ろからの姿がやはり美しい

メルセデスベンツGLCクーペ220d

クーペは後ろ姿が美しいのが特徴ですから、どうしても後ろからの写真が多くなります。その最大の特徴でもある後ろ姿では、このCピラーの傾斜がきつくなっており、やはり見た目はスタイリッシュで格好いいところです。そのスタイルと引き換えに、後部座席へ世の高い人の昇降ではピラーが邪魔になります。

先日見てきたGLEクーペは、横幅2m/全長5m超は日本国内で使うには大き過ぎます。このCクラスファミリーの全長4.7mくらいの方が、日本の道路での取り回しは絶対的に良いはずです。大柄なGLEでは都内の住宅街の路地は扱いにくいため、このGLCくらいの大きさがちょうど良いサイズでもあります。

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基本的にテールランプなどはGLEを踏襲しており、SUVクーペのシリーズで弟分であることを主張しています。見た目もスッキリと、スタイリッシュになっています。

メルセデスベンツGLCクーペ220d テール

さてここで問題です、外からリアゲートを開ける場合、どこにスイッチがあるでしょうか?

たぶんそうだろうなぁ、とは思ったのですがまさかの場所がスイッチになっています。初めての方の場合、絶対にこのリアゲートは開けられません。マカンのテールゲートもスイッチが判りにくく隠されていますが、質実剛健だったメルセデス・ベンツもこんな洒落たことをするようになったのでした。

ベンツマーク、スリーポインテッドスターが押し込めるスイッチになっており、押すとロックが外れます。あとは電動でスーッと上がっていくという仕組みです。このスリーポインテッドスターにはバックカメラも隠れており、シフトがバックに入りますと裏返ってカメラが出て来ます。昔のベンツでは考えられないくらいに、かなり洒落ているのです。

アメリカの女性の社会進出がクーペモデルを支えています

メルセデスベンツGLCクーペ220d テールランプ

ベンツCLSの成功以降、近年ではこういった4ドアクーペスタイルのモデルが新型でたくさん登場しています。以前から開発は噂にはなっていたのですが、AMG GTにまで4ドアモデルが準備されています。ポルシェにもカイエンクーペなるモデルが開発中で、テスト車両のスクープ写真が捉えられていたりします。

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これは、アメリカ市場でこのテのスタイリッシュ4ドアの需要が活発であることが大きく関係しています。

1967年にアメリカでは「雇用機会均等法」が施行され、1970年代~女性の社会進出が進むことになります。この時に、女性の通勤車として需要があったのが「セクレタリー(secretary)カー」(=秘書の車)と呼ばれたスポーツクーペでした。それがマスタングやトランザムといったアメ車たち、それに続くフェアレディZやセリカといった日本車のクーペモデルだったのです。

特に日本車のスポーツクーペは、安価で壊れないということで通勤車には最適でもあったのでした。昔のポルシェのように、朝エンジンがかからないでは仕事に差し支えますから。

現在はそのアメリカ市場でも、こういったスポーツクーペが全く売れません。これが日本車からも手ごろな価格の2ドアクーペが絶滅した最たる理由ではありますが、この「セクレタリーカー」を購入していた女性層が今ではこういったSUVクーペを購入しているのです。アメリカでのカイエンやマカンの購入者、6~7割が女性だとされています。

つまりは、通勤や買い物で常に1~2人の乗車、キャンプやスポーツなどのアウトドア趣味は持たないため、それほど積載能力はいらなくてセダン+αがあればよい、でもセダンはレンタカーっぽくてダサイ、という層がこのクーペSUVを購入しています。

GLCクーペ荷室の使い勝手は十分ながらも積載量は期待薄

メルセデスベンツGLCクーペ220d トランクスペース

スタイリッシュな4ドアセダンとして考えれば、実用にして十分。ただし、SUVとして荷物を満載することを考えると荷室は狭く、大きな荷物は乗りません

ちょっと、キャンプや海水浴へテントや諸々道具を持って行くとなると、荷室の用量はまったく足りません。というか、スタイル優先でCピラーがなだらかに落ちていることからトランクスペースの高さが無いのです。

もし荷室の広さにこだわるのであれば、普通のGLCかCクラスワゴンの方がよく、よりたくさんの荷物を積載することができます。

外観の見た目は、最近の"は虫類"的なオーソドックスなベンツ顔でCクラス及びGLCに準じます。道具としての車ということであれば、申し分はありません。

最近のベンツでは、クラスの区別が付かないとよく言われますが、ヘッドライトのスモールライトの眉毛の本数で見分けることができます。1本がCクラス、2本がEクラス、3本がSクラスとなっています。夜間では、テールランプの天使の羽も同様に数が違います。

インパネもCクラスファミリーであることを主張、Cクラスセダンと全く同じです。違うのは、SUV独特なアイポイントが少し高いくらい。

メルセデスベンツGLCクーペ220d インパネ

ただし、運転席からは優雅なクーペに乗っているという特別感は全く無くGLCともインパネは共通であることからこれならGLCに乗っていても変わりません。後方視界や荷物が積める分、使い勝手はGLCに軍配が上がるからです。

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マカンに試乗した時は、右ハンドルの足元左側が窮屈に感じたのですけれども、このGLCクーペは十分な足元のスペースがあります。さすがに今の時代、ベンツともなると右ハンドルも設計当初から考えられているようで、全く問題はありません。

後席足下も広く十分、運転席のポジションはかなり後ろへ寄っていても、これだけの足下スペースがあります。

メルセデスベンツGLCクーペ220d 後部座席足下

気になったのは、ちょっとサイドシルが高いかなぁということ。このあたりは、ボディ剛性を上げる意味からしょうがないところなのかもしれません。日本車のように、昇降性を優先してサイドシルを低くするよりも、安全面に対しては良心的なのでしょう。

トランクスペースは、セダンと比べても広さ的には十分なのですが深さがありません。背の高い荷物、例えば大きな段ボール箱とかは、テールゲートのガラスが邪魔になり入らないことも予想されます。

2人乗車ならば、後部座席を倒すことで前の方へ大きな荷物も入りますが、4人乗車だと荷物は制限されます。

そういった使い勝手を考えるのであれば、コレ1台で何でもこなそうとするのなら、普通のGLCかCワゴンの方が使い勝手はいいでしょう。ベンツのワゴンモデルの使い勝手は、昔から定評があります。

Cクラスセダンと比べるのならば、このGLCクーペもありなのかな、とは思います。

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