1963年登場のナローポルシェから始まる歴史
オートモビルカウンシル2023の主催者テーマの一つ目は、「ポルシェ911 60周年記念企画~初期ナローからカレラGTまで」とした展示が行われています。
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オートモビルカウンシル2023 -フェラーリ・スペチアーレ
F40/50と節目の年に登場する限定生産モデル -スペチアーレ オートモビルカウンシル2023のもう一つの主催者テーマは ...
会場への入り口を入りますと、正面にポルシェが4台並んでいます。すぐ隣にはポルシェジャパンのブースがあり、今回の企画はポルシェジャパンの全面協力で実現したと言われています。
そのせいか、今回のオートモビルカウンシル2023では、ポルシェの展示台数が多く目立つ結果となっています。
その一番手前のポルシェ911から、
- 1966年型ポルシェ911
ポルシェ911の歴史を決定付けたナローポルシェ911、初代のタイプ901。SやTといったグレードが加わる以前のシングルグレード時代のモデル。 - 1973年型ポルシェ911カレラRS2.7
現在まで続くポルシェ911の基本シルエットを形作ったナローポルシェ世代最後で最強のナナサン・カレラ。 - 1993年型ポルシェ959
現代ポルシェのPTMやPASMといった電子制御技術の基礎となったテクノロジー満載、後世の量産車が受け継ぐハイテクモンスター。 - 2006年型ポルシェ・カレラGT
レースを重視するポルシェのビジネスモデルにおいて、後のポルシェのデザインスタディとなるスーパースポーツ。
ポルシェ911の初代の発売から、今年でちょうど60年。RRの基本レイアウトとそのシルエットを大きく変えずに、モデルチェンジをしながら今もなおその血統が受け継がれてきたモデルは、他のメーカーには無い孤高の存在でもあります。
その歴代のポルシェ技術陣が911に込め磨き上げてきたノウハウは、いつの時代も常に他社の多くのスポーツカーのベンチマークとして、頂点に君臨しています。
初代ポルシェ911タイプ901
1948年に最初の「ポルシェ」を冠した356が製造・販売され、その後継モデルとして1963年9月「タイプ901」というコードネームの2ドアで2+2シーターファストバッククーペがフランクフルトショーで公開されます。
「901」という番号は、当時フォルクスワーゲンでは900番台を開発コードとして使用していなかったことから、その1番目ということで901からのスタートでした。ところが、いざ市販する段階で「x0x」という真ん中に0が入る番号はプジョーからクレームが入り、商標登録をしており使えないことから急遽「911」という車名に変えての発売となりました。
その後、1964年秋に911は市販されます。
この初代ポルシェ911は「ナローポルシェ」と呼ばれており、「narrow」とは「狭い」とか「細い」という意味です。当時のポルシェ911では、横幅が1,610mmと狭かったからと言われていますが、前身のポルシェ356の1,660mmよりも狭かったからとも言われています。
なぜ横幅が356に比べて狭くなったのかというのは、空気抵抗を減らして最高速度を上げるのが目的でした。
一般的に「ナローポルシェ」とは、~1973年に製造されたタイプ901型をさしますが、本当のナローは1968年にホイールベースが延長されるまでのモデル、とされる場合もあるようです。ちなみに、アメリカではこのタイプ901の初代は「アーリーポルシェ」と呼ばれています。
当初、このタイプ901の初代ポルシェ911は、エンジンが低回転では扱いにくい高速トルク型で、さらにクラッチが独特で乗りこなすにはテクニックが必要な車でした。また高速では直進性が悪く、簡単には運転できる車ではありませんでした。
初代ポルシェ911の抜きん出た高性能を世界中に知らしめたきっかけが、モンテカルロ・ラリーでの優勝です。1968年から1970年までの3年連続で1-2フィニッシュを独占したことで、そのシャーシやボディの基本性能の高さを証明することとなったのでした。
初代901型最後で最強のナナサンカレラ
ポルシェ911の長いレース活動の中で、特別な存在となっているのがこの「ナナサン カレラ」になります。「ナナサン」とは1973年に生産されたモデルのことで、今年はちょうど50周年にあたります。
1973年式の「ポルシェ911カレラRS2.7」、カレラはスペイン語で「レース」、RSはドイツ語で「Renn Sport」で「レーシングスポーツ」の頭文字となります。発売当時、日本国内に正規輸入された台数は、20台以下とされています。
「ポルシェ911カレラRS2.7」といえば、漫画『サーキットの狼』で主人公のライバルの愛車、でピンとくる人もいるのではないでしょうか。当時のスーパーカーブームに沸いた少年たちには、ワクワクする「ポルシェ」でもあったのです。
この「ナナサン・カレラ」は、当時のヨーロッパGT選手権に出場するため、ホモロゲーションを取得するのに500台の限定生産で製造されたモデルです。ライバルとなるのは「フェラーリ356GTB/4」「デ・トマソ・パンテーラ」などの大排気量車であったことから、エンジン排気量を2.4→2.7Lへアップ、増大したパワーを受け止めるべくタイヤ幅を広げて、車重はロードカーとしては驚異的な900kgまで軽量化しています。
この時の変更点が、幅広のタイヤを収める大きく膨らんだフェンダーアーチやリアスポイラーのダックテールなど、今日のポルシェ911のデザインを決定づけるシルエットとなっています。今ではこの形はポルシェのアイコンとなっており、キーの形となるなどシンボルにもなっています。
「ナナサン・カレラ」は、当初は500台の限定生産の予定でしたが、パリ・ショーで発表されるや世界中からの注文が殺到し、最終的には1,580台が生産されます。この商業的な成功が、現在のGT3やGT2へと続く「レースと直結した特別モデル」の販売、ポルシェが積極的にレース活動を行なっていくきっかけとなったモデル、ビジネスモデルを確立した最初となります。
最新ポルシェへと繋がる959の電子制御技術
一見してポルシェ911の派生モデルのように見えるボディですが、911との共通部品は一つもなく完全なオリジナルの専用設計、グループBのホモロゲーションを取得するために200台限定で計画されたモデルです。1986年に開発コードのままの「959」の車名で発売されると注文が殺到し、最終的には292台(ポルシェ公式)が生産されました。
このポルシェ959は、タイプ930の911をベースとしてグループCカー「962C」の技術を導入したものです。
ポルシェ959の最大の特徴は、フルタイム4WDシステムにあります。当時、無敵最強だったアウディのクワトロシステムを超えるべく、ポルシェでは前後のトルク配分を自動で調整する可変トルクスプリット方式のAWDシステムを開発します。
常にポルシェをベンチマークとして追ってきた、日産スカイラインGT-RがR32で4WDシステム「アテーサE-TS」を採用するのが1989年、その仕組みはよく似ておりこのポルシェ959を徹底的に研究してきたと言われています。
また、ドライバーが室内からソフト/ミディアム/ハードと任意に設定できる可変ダンパーや、最低地上高の調整機構など、現在のPASMに通じる機能が装備されたのも、959が最初となります。
ポルシェ959は、電子制御化の波が押し寄せていた1980年代において、PTM(ポルシェトラクションマネジメントシステム)やPASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメント)といった、現在の最新モデルへと通じる新技術の実験モデルであったともいえます。
現在のポルシェへ通じるデザインのポルシェ・カレラGT
カレラGTは、2000年のパリ・モーターショーでそのコンセプトモデルが発表され、2003年のジュネーブショーで市販モデルが発表されます。レーシングポルシェ「917」をオマージュしたスタイリングは、コンセプトカーそのままの姿で市販化されます。
ボディ構造は一般的なモノコックではなく、カーボンファイバー製のバスタブ構造に、エンジンや足回りが乗るやはりカーボンファイバー製のサブフレームが連結されます。ボディパネルも全てCFRP製で、その重量は1,380kgと大排気量エンジンの割には軽量となっています。
エンジンは、ダウンサイジングへと向かうこの時代最後のNA5.7LのV型10気筒の自然吸気の大排気量エンジンで、6速MTのトランスミッションを組み合わせます。時代的にフェラーリなどはセミATが普及し始めている中で、クラッチペダルが残るという正反対のアプローチをしているところが興味深い部分です。
その理由としては、ル・マン24時間レースのマシンが、CLK-GTRのようなGTクラスからプロトタイプカークラスへと移行したことで、ル・マン用の開発車両が宙に浮いてしまい、期せずしてコンセプトモデルへ転用したという経緯があります。
そのような経緯があることから、カレラGTの強力な612馬力はハイスピードでのコーナーではアンダーステアが強く、限界を掴みにくいことからそれなりのスキルを要求される車だとされています。完全なレース用で、日本の市街地では非常に乗りにくいモデルであることは容易に想像がつきます。
そんな状況も相まってか1,500台が生産予定でしたが、最終的な生産台数は1,270台とポルシェにしては珍しく予測を外したスペシャルモデルとなっています。ここで余った部品が、10年後の918スパイダーに流用されています。
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ジュネーブショー2010でポルシェ918 スパイダー発表、市販化へ向けて
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