ジャパンモビリティショー2023 東京ビッグサイト

Japan Mobility Show2023 イベント 東京モーターショー

4年ぶりの東京モーターショウ改めジャパンモビリティショウ

2023年11月5日

自動車産業を核に日本経済の復活を目指す

前回の東京モーターショウは、2019年の秋開催で、通常2年おきに開催されるはずの東京モーターショウは、次の2021年には新型コロナ禍により解散を断念しています。このため、日本を代表する最大級の自動車ショウは、2023年に4年ぶりの開催となったのでした。

ここで名称が、東京モーターショウからジャパンモビリティショウへと変わっています。これは、新車発表が中心の自動車ショーから、自動車産業を中心として未来の技術を提案するショーへとの変革の思いが込められているとされています。

カーボンニュートラル、SDGs、自動運転、物流2024年問題など、これから立ち向かわなければならない様々な問題を、ジャンルを横断して技術で解決していこうという見本市になっています。

おそらくは、アメリカのCES(コンシュマー・エレクトロニクス・ショー)やドイツベルリンで開催される国際コンシュマー・エレクトロニクス展(IFA)のようなものを目指しているものと思われます。これらのショーでは、その年の最新のガジェットやテクノロジーが取り上げられており、世界中の自動車メーカーも参加しています。

日本には、このようなショーに該当するものはCEATECがありますが、こちらも家電の沈下と共に来場者数の減少が危惧されていることから、今回のジャパンモビリティショウとの連携が話題となっています。

企業側からしますと、一つブースを作るだけで家を1軒作るのと同じくらいの金額がかかるとされており、数千万円の出費になるとされています。大手自動車メーカーのような広いブースであれば、億を超えるとまで言われています。

そうなりますと、いくら企業宣伝のためとはいえその負担は大きく、昨今の懐事情からすればなかなか出しにくい金額でもあるわけです。そこへ、10月初旬にはCEATECへ幕張で出展し、その数週間後には有明でモーターショウへ出展するというのは、大手企業にとってもかなり大きな負担となります。

このため、今回の富士通のようにCEATECへの出展を見送り、ジャパンモビリティショウへ1点集中するというような企業が出てきてもおかしくはありません。今回の富士通は、CEATECへ第1回からの出展が途切れたことで、大きな話題となっています。

様々な場面で岐路に立たされている自動車

今回のジャパンモビリティショウ2023で際立っていたのが、

・ほぼ全てのコンセプトカーがBEV(バッテリーEV)であること
・各メーカー2ドアクーペのスポーツカーが目立っていた

これには理由があり、EUでは2035年までにガソリンエンジン搭載車の新車販売が全面禁止となることで、既存のハイブリッドを含めた内燃機関は存続できなくなります。合成燃料e-fuelを使うのであればガソリンエンジンでも2035年以降も新規に販売が可能ですが、リッター700円とも言われる生産コストなど実現は難しいとされています。

これまたEU域内においては、2026年から「時速50km/h走行時における騒音規制」が強化され、マフラー排気音だけでなく走行音まで含めた規制が厳しくなります。

これらの規制から、今後ガソリンエンジン搭載車を新規に開発し、販売することが非常に難しくなっています。

また今回のショーに限っては、日本車の各自動車メーカーのコンセプトには、2ドアクーペのスポーツカーが必ず含まれています。まるで、全体で示し合わせたように。

トヨタはミッドシップスタイルの「FT-Se」、日産はGT-Rを想起させる「HYPER FORCE」、ホンダは往年の名前が復活で「プレリュード・コンセプト」、マツダは次期ロードスターのデザインスタディとされる「MAZDA ICONIC SP」、スバルは4輪駆動スポーツカー「SUBARU SPORTS MOBILITY Concept」、ダイハツはデカいコペンと言われて5ナンバー枠に収まる「ビジョン コペン」と、判で押したようにクーペが勢揃いしています。

これはなぜなのでしょうか?

まずは、主催者の自工会からテーマ「乗りたい未来を探しに行こう!」「もう一度、ワクワクする夢を」に沿った展示を要請されていることがあげられます。

これにより、各社ともに「ワクワクするのはスポーツカー」「格好いいのはスタイルと機能美で割り切れる2ドアクーペ」という結論に達したためだと思われます。

家族が全員乗れて実用的なのはミニバン、人や荷物が積めて快適に移動ができるのはSUV。でも人は2人しか乗れなくても荷物は少ししか積めなくても、格好いいスタイルはスポーツカーだよね、家族や生活スタイルに制約が無ければスポーツカーが欲しい、という夢の具現化をしたのが今回のジャパンモビリティショウのテーマであると考えられます。

たとえ買えなくても、EVが作る未来でもスポーツカーが走る風景を見てみたい、と前回2019年の東京モーターショウの来場者数130万人を超えたい、という主催者の思惑が各社の出展内容に見え隠れします。

急ごしらえのハリボテからすぐにでも市販可能まで

ショーのコンセプトカーが、そのままの形で市販されることはまずあり得ません。会場で「10年後、こんな車が出てくるのかなぁ?」と言っている声が聞こえて来ましたが、残念ながら法律の基準や生産の都合など、様々な事情からコンセプトカーはあくまでも夢を見せるためのものです。

展示車両の中には、やっつけ仕事でとりあえず制作したというものも少なくなく、走行は不可でタイヤも曲がらない、単なるハリボテというものも少なくありません。

その反面、デザインは細部まで煮詰められており、法規もクリアして生産性も考えられている、とかなり完成度が高いモデルも存在します。所々に遊び心は見られるものの、ショーでの反応を見て発売を決める予定になっているモデルも存在します。

一番多いのが、かつての日産のMID4のように一度は市販化を念頭に入れて本気で製作をするも、様々な事情で市販化は断念されますが、各技術はそれぞれが市販車へ受け継がれるというケースです。

今回も「MAZDA ICONIC SP」などはその可能性が高く、デザインは次期ロードスターで2ローターのロータリーエンジンはMX-30後継のモデルへと受け継がれる可能性があります。こういったショーモデルを隠れ蓑にして、次期新型モデルへの意見を集めている可能性があるわけです。

極秘で開発中の新型モデルを、ズバリそのまま「どうですか?」とはできませんから。今回、このズバリをやっているのが、ダイハツのデカいコペンですが。

こちらもライト類などはもっと現実的なものになるでしょうけれども、外版パネルなどは生産性も考えられており、ほぼこのままの姿での市販化を考えているようです。

ジャパンモビリティショウではおすすめアーリーチケット

さて、実際にジャパンモビリティショウ(旧東京モーターショウ)へ行ってみようと思った時に、当然お目当てのメーカーのコンセプトカーがあるかとは思います。

ところが、旧東京モーターショウでは平日で4~5万人、土日休日ともなりますと10万人前後が会場へと訪れます。この休日10万人という数字は、いくら広いビッグサイトでも朝夕ラッシュ時の新宿駅並みの混雑となり、通路の移動も困難になるなど自由にはできない状況となります。

そうなりますと、当然ながらステージ上のコンセプトカーには近づくことはできず、ましてや写真を撮るなども至難の業となります。

そこでオススメなのが、「アーリーチケット」です。少し価格は高くなるのですが、通常は10時から入場となるところを1時間早く9時から入場することができるチケットです。発行枚数が今回は5000枚と少ないため、ガラガラの状態でステージ間近まで寄ってコンセプトカーを見ることができ、他の人が写り込まないように狙った角度から自由に写真を撮ることができます。

一般的には、こういったアーリーチケットは早期に売り切れることが多いことから、早めの対応が必要です。ただ、今回のジャパンモビリティショウでは、開催1ヶ月前の10月15日の段階で、このアーリーチケットが土日も含む全日程で売れ残っており、人気が無いのか宣伝等での周知が足りないのか、とにかく売れ残っていました。

コミケのアーリーチケットなんかは、発売日に取り合いで瞬殺ですのに。

実際に、このアーリーチケットで9時に入場し、すぐに「トヨタ」「ホンダ」「マツダ」「日産」と、10時以降になりますと確実に混雑するブースの、話題のコンセプトカーを先に撮影をしてしまったのでした。

「乗りたい未来を探しに行こう」というテーマで始まったジャパンモビリティショウですが、もっとレベル5の自動運転を具現化する技術などを展示していると思っていましたが、いずれのメーカーも示しているのはどこかのアニメのワンシーンのようなもので、アニメで見た未来の世界が近づいてきたとは感じられませんでした。

慌ててBEVのコンセプトカーをハリボテで作ったり、すでにテスラやBYDなどの新興メーカーでは量販車に実用化しているメガプレスをわざわざ展示したりと、世界に対して周回遅れとなりつつある日本の自動車産業を示しただけのショーという印象です。

BEVを発売するのはいいのですが、では充電インフラはどうするんだ、古くなりつつあり壊れていたりする低出力の旧規格CHAdeMO充電器はどうするんだなど、これら重要な問題点の解決策は何も示されないまま、ハイブリッドを含むガソリンエンジンが廃されBEVへと突き進むことになりそうです。

ガソリンエンジン車のオーナーは、採算が取れなくなってガソリンスタンドが次々と閉鎖され給油難民となる未来、アーリーアダプタであるBEVのユーザーは高速道路SA/PAの充電器を取り合い、シャクトリムシ充電をしながら時間をかけて目的地へと向かう充電難民、となる未来しか見えないのですけれども。

こういったみんなが将来的に不安に思っていることを技術で解決する、というのが技術大国である日本のショーではないかと今回のジャパンモビリティショウを観て思うのでした。

電池容量を増やして、1回の充電で1,000km走れるコンセプトを発表するのはいいのですが、じゃぁそれを充電するのには何時間かかるのですか、という問題です。そこを、「じゃぁこんな技術で解決します」というのが欲しかったかもしれません。

ジャパンモビリティショー2023 JMS 日産GTRニスモ
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